FC2ブログ

武士道-14 武士道が求めた女性の理想像

  04, 2018 15:06
武士道の世界

14.武士道が求めた女性の理想像
(1)家庭的であれ、そして女傑であれ
「・・・「神秘的」あるいは「不可知」を意味する「妙」という漢字は、「若い」という意味の「少」と、「女」という二つの漢字が組み合わされている。というのは女性の身体の美しさと、繊細な発想は、男性の粗暴な心理的理解では説明できないからである。・・・妻を意味する漢字である「婦」は箒をもっている女性を表している。その箒は当然のことながら、結婚相手に対して攻撃したり、防御するために振り回すためではない。また魔法を用いるためでもない。それは箒が最初に考案されたときの無害な使い方にもとづいている。英語の場合、妻(wife)は織り手、娘(daughter)は乳しぼりという語源から発生したが、漢字の「婦」の場合も、それらに劣らず家庭的な語源である。・・・武士道は本来、男性のためにつくられた教えである。・・・若い娘たちは、感情を抑制し、神経を鍛え、武器とくに長い柄の「薙刀」と呼ばれる武器を操り、不慮の争いに対して自己の身体を守れるように訓練された。しかし、この種の武芸習得の主な動機は、戦場でそれを用いるためではない。それは二つの動機、すなわち一つは個人のためであり、もう一つは家のためであった。・・・女性の武芸の家庭における効用は、後に見るように息子たちの教育にあった。・・・」

(2)女性に求められる立ち振舞い
「・・・少女たちは成年に達すると「懐剣」と呼ばれる短刀を与えられた。その懐剣はときには彼女たちを襲う者の胸に、また場合によっては彼女自身の胸に突きつけられるものであった。実際には後者の場合が多かった。・・・自害の方法を知らないということは女性にとって恥とされた。たとえ、解剖学的に教えられたことがなくとも、喉の部分を斬るかを知っておかなくてはならなかった。また死の苦しみがいかほどであろうとも、そのなきがらは乱れを見せず、端正かつやすらかな姿で見出されなければならなかった。そのためには両膝を帯ひもでしっかりとしばる方法を知っておく必要があった。・・・貞操はサムライの妻にとってはもっとも貴ばれた徳目であって、生命を賭しても守るべきものとされていた。・・・」

(3)妻女の務めとは何か
「・・・女性には芸事や、しとやかな日常生活が要求されていた。音曲、歌舞、読書をすることはけっしておろそかにされなかった。日本文学における素晴らしい詩歌のいくつかは女性の感情表現であった。実際、日本の女性は「純文学」史上、はかりしれない大きな役割を果たしていた。・・・その稽古は必ずしも技巧や芸そのものを学ぶためではなかった。究極の目的は心を浄化することにあった。・・・さまざまな芸事は、常に道徳的な価値に従うべきものとする考えである。音曲や舞踏は日常生活に優雅さと明るさを加えるだけで十分とされた。それらは見栄や奢侈のためのものではなかった。日本の芸事も他人に見せたり、それによって世に出るためのものではなかった。それは家の中の気晴らしのためのものであった。・・・家を治めることが女性教育の理念であった。古き日本の女性の芸事は武芸であれ、文書であれ、主として家のためのものであった。・・・娘としては父のために、そして母としては息子のために、彼女たちは自分自身を犠牲にした。このように、幼いころからひたすらわが身を否定することのみを教えられたために、日本の女性の生涯は独りだちのものではなく、従属的な奉仕献身の一生であった。その存在が夫の助けとなるならば、妻は夫とともに舞台に立ち、夫の仕事に邪魔となるならば、幕の後ろに引きさがる。・・・」

(4)自己否定なくしては「内助」の功はありえない
「・・・女性が夫、家、そして家族のために、わが生命を引き渡すことは、男が主君と国のために身を棄てることと同様に、みずからの意志にもとづくものであって、かつ名誉あることとされた。自己否定-これなくして女性の人生の謎を解く鍵は見当たらない。それは、男性の忠義同様に女性が家を治めることの基調であった。女性が男性の奴隷でなかったことは、その夫たちが封建君主の奴隷でなかったことと同じである。妻たちが果たした役目は「内助」の功として認められた。妻女たちは奉公の上り階段に立っている。彼女は夫のために自己を棄て、夫はそれによって主君のために自己を棄て、最後に主君は天に従うことができるというわけである。・・・私が明らかにしたい点は、武士道の教え全体が徹底した自己犠牲にい精神に染め上げられており、その精神は女性のみならず、当然のこととして男性にも要求されたのである。・・・一人のアメリカ女性解放運動家は、「日本の若い女性たちよ、古い慣習に反対するために決起せよ」と叫んだ。だがこの自己犠牲の教訓が完全に消え失せない限り、日本の社会はこの軽はずみな考え方を受け入れないであろう。そのような反対運動は成功するだろうか。それによって女性の地位が改善できるだろうか。そのような性急な運動によって勝ち取られた権利は、果たして現在、日本の女性たちが受け継いでいるきわめて優しい気質や振る舞いを失うことと引き合うだろうか。ローマの女性たちが家庭のことを顧みなくなってから、言語に絶するほどの道徳的頽廃が起こったではないか。あのアメリカの解放運動家は、日本女性たちがの反乱が、彼女たちが歴史的進歩のためにとるべき真の進路であると保証できるだろうか。・・・」

(5)サムライ階級の女性地位について
「・・・ギゾー氏は、封建制度と騎士道は後世に健全な影響をもたらしたという。一方、スペンサー氏は、軍事社会(軍事的でない封建社会はありえない)においては、女性の地位は必然的に低く、産業社会に近づくときにのみ、その地位は改善されると述べる。・・・日本の武士階級はサムライに限られていて、およそ二百万人に達していた。その上に軍事貴族ともいうべき「大名」と宮廷貴族である「公家」がいた。これらの身分が高い有閑貴族は名ばかりの武家であった。サムライの下には一般庶民、すなわち農・工・商がいた。彼らの生業は泰平の世のたつきであった。このように見てくると、ハーバード・スペンサーが軍事型社会の特徴として説いているものは、「サムライ」の階級に限られていたといえるかもしれない。一方、産業型社会の特色はそれらの階級構成の上層と下層にあてはまる。このことは女性の地位によく表れている。なぜなら、あらゆる階級の中でサムライ階級の女性ほど自由を享受しなかった人びとはいなかった。奇妙なことに、社会的身分が低いほど、夫と妻の地位はより平等であった。(その例として職人の場合がある。)また身分が高い貴族の場合も両性の地位上の差異はそれほどいちじるしくはなかった。・・・「武士道」の下において、女性の地位が非常に低いという印象を与えるとすれば、私は歴史における真実をいちじるしく不当にゆがめたことになる。・・・私たちは差異ということと、不平等ということを区別することを学ばなければならない。・・・アメリカの独立宣言が、すべての人間は平等につくられている、というとき、それは人間の知能や肉体的能力に関していわれたわけではなかった。・・・人間の平等に基準は、法律上の権利にある。・・・銀の価値を金の価値と比較するように、女性の地位を男性の地位と比べ、比率を数量的に算出することは、果たして正当で、かつ十分なことなのだろうか。このような計算の方法は、人間が備えているもっとも大切な価値、すなわち本質的な価値を考えに入れないことになってしまう。・・・」

(6)家庭において重んじられた女性
「・・・武士道はそれ自体の基準をもっていた。・・・つまり、女性の価値を戦場と家庭の、双方で測ろうとしたのだ。戦場においては、女性はまったく重んじられることはなかった。だが家庭においては完全であった。女性に与えられた待遇は、この二重の尺度に対応していた。すなわち女性は社会的、あるいは政治的な存在としては重要ではないが、他方、妻、あるいは母としては女性は最高の尊敬と深い愛情を受けていた。ローマ人のように軍事的な国民の中で、母親たちがあのように敬愛されたのか。それは彼女たちがまさしくマトローナすなわち母親であったからではないか。・・・父や夫が出陣し、家は留守になりがちであったため、家の中のやりくりはすべて母や妻の手に委ねられていた。子女の教育、ときによっては家の防備も彼女たちに託された。・・・外国人の間で・・・自分の妻のことを「愚妻」とか、それに似た言葉が用いられるのは、女性が軽蔑され、高く評価されていないからではないか、というのである。・・・しかし、同時に「愚父」、「豚児」。「拙者」などという言葉もごく普通に用いられていることを示せば、このような誤解を解くには十分な答えであると思う。・・・他人に対して夫や妻が、それぞれの半身のことを、それが善き半身であるか、悪しき半身であるかは別にして、かわいい、聡明である、優しい、などと語るのを聞くと、私たち日本人としてはとてもわざとらしく聞こえる。・・・そして自画自賛は、日本人にとっては少なくとも悪趣味以外のなにものでもない。・・・西洋文明においては、男性が女性に対してはらう尊敬心が主たる道徳的基準とさえなった。しかし、武士道の武の道徳においては。善意の分け目は別のところに求められた。そのような基準は、人はその人自身の内なる崇高な魂に結びつくこと、そしてこの書物の初めの章で述べた五倫の道によって他の人の魂と結びつくという義務の道筋に沿って存在した。この五倫を語る中で私はすでに忠義、すなわち、一人の男同士としての家臣と主君の関係に注目した。・・・なぜなら、武士道にとって家臣と主君という関係こそが基本的な関係であったからである。・・・」
スポンサーサイト

0 Comments

Post a comment

What's New